近年、BtoBのビジネス環境において、インサイドセールスの役割が急速に重要性を増しています。
非対面での営業活動を専門的に担うインサイドセールスは、従来の営業手法とは異なり、人的リソースの配分を最適化し企業の営業活動を高効率化する施策として期待されているのです。
そして、このインサイドセールスを効果的に運用するビジネスフレームワークの1つに、「THE MODEL(ザ・モデル)」があります。
「THE MODEL」のコンセプトを要約すると、この枠組みは、営業プロセスは「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」の4段階に区別して分業・共業体制を敷かれることで、リード獲得から成約までの営業活動の精度向上と資源配分の高効率化が実現できるとするものです。
この記事では、インサイドセールスの実践的運用法を示す「THE MODEL(ザ・モデル)」に注目し、「THE MODEL」の概念と具体的な運用方法について概要を解説します。
「THE MODEL」は、インサイドセールスを含めた分業体制の営業手法として知られ、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの各部門が効果的に連携することを特徴としています。
THE MODEL(ザ・モデル)とは?
THE MODELは、営業プロセスを最適化するための革新的なフレームワークです。
このモデルは、営業プロセスの各ステージを細分化し、各部門の役割と責任を明確に定義することによって、効率的で成果を生む営業体制の構築を目的としています。
THE MODELの核となるのは、従来の営業方法とは異なる、データ駆動型およびプロセス中心のアプローチであり、特にインサイドセールスの重要性が際立つものです。
- THE MODELは営業プロセスのフレームワークの名前
- THE MODELはインサイドセールスを含めた分業体制の営業手法
- THE MODELと従来の営業手法の違い
THE MODELは営業プロセスのフレームワークの名前
このフレームワークは、個々あるいは部門ごとの営業活動に明確な目的と方向性を与え、組織全体の営業効率を高めるためのものです。
THE MODELがアメリカから日本に持ち込まれたのは2005年頃。
当時、米国オラクル社を経て同国セールスフォース・ドットコムにジョインし日本市場でのオペレーションを担当することとなった福田康隆氏が、自身の米国で経験した営業スタイルを適用・改善し始めたことに端を発します。
その後、福田氏が自ら発展させたビジネスプロセスの全体像を著書『THE MODEL』(2019)のなかで発表したことで、国内のビジネス界で大きく取り上げられるようになりました。
THE MODELはインサイドセールスを含めた分業体制の営業手法
マーケティング部門はリードの獲得に焦点を当て、インサイドセールスはこれらのリードの購買意欲を高め、フィールドセールスは顧客との商談を進め、最終的な契約を獲得します。
さらにカスタマーサクセスは、契約後の顧客サポートとサービスの継続的な利用を促進します。
このように、THE MODELは各部門の専門性を最大限に活かしながら、全体としての営業成果を高めることを目指しています。
THE MODELと従来の営業手法の違い
THE MODELでは、各ステージでの目標やKPIが明確であり、営業プロセス全体の効率と効果を同時に追求することができます。
また、顧客の購買プロセスのほとんどが営業担当者との接点を持つ前に行われている現代の市場環境において、マーケティングの役割はより重要になっています。
従来のように、獲得したメールアドレスに一方的に画一的な内容の営業メールを送信しても効果は低く、むしろ、不快に思う人を増やすだけの時代になっています。
THE MODELは、営業活動をデジタル化し、前段階の準備をより綿密に行う手法なです。
THE MODELが注目される理由
THE MODELがBtoB営業においてTHE MODELが急速に広まっ理由は、その革新的なアプローチが市場環境の変化に適応しているからです。
ここでは、THE MODELが注目される理由の中でも、特に大きなものを3つ紹介します。
- 顧客の購買プロセスの半分以上は営業に会う前に終わっているから
- テクノロジーの進化によってOne to Oneマーケティングが実現可能になったから
- 分業することでボトルネックを把握しやすいから
顧客の購買プロセスの半分以上は営業に会う前に終わっているから
これは、顧客が製品やサービスについての情報収集、比較検討、意思決定をインターネットやソーシャルメディアを通じて行う現代の市場状況を反映していると言えます。
インターネットとデジタルメディアの利用増加により、顧客が自身で情報を探求し、自主的に意思決定を行う傾向が強まっています。
その結果、マーケティング部門の役割が拡大し、購買決定プロセスの初期段階でのリード獲得や顧客のエンゲージメントに重点を置くTHE MODELが注目されたのです。
テクノロジーの進化によってOne to Oneマーケティングが実現可能になったから
デジタルテクノロジーの進化は、営業とマーケティングのアプローチに大きな影響を与えています。
特に、One to Oneマーケティングの実現が可能になったことは、営業プロセスに大きな変化をもたらしました。
One to Oneマーケティングは、個々の顧客に合わせてパーソナライズされたマーケティング戦略を実施することですが、従来のマンパワーによる顧客管理手法では、労力がかかり過ぎることからこれを実現することができませんでした。
しかし、THE MODELは、最新テクノロジーを活用することで、顧客ごとのニーズや行動に基づいた個別のアプローチを可能にしたのです。
このアプローチにより、企業はより効果的な顧客関係を築き、販売機会を最大化できるようになります。
分業することでボトルネックを把握しやすいから
THE MODELでは、マーケティング部門はリードの生成に、インサイドセールスはリードの育成に、フィールドセールスは商談の実施と受注に、カスタマーサクセスは契約後の顧客サポートと継続的な関係構築に焦点を当てます。
このような分業体制は、各部門の専門性を最大限に生かし、全体としての営業効率と成果を高めます。
また、分業制は、どのステージがボトルネックになっているかを把握する上でも重要です。
部門ごとにKPIを設け、たとえば遅滞している工程、負荷がかかり過ぎている工程などが明確になれば、部門間の連携や調整によって、最適な稼働を維持することができます。
THE MODELにおける4つのプロセスと役割
THE MODELは、現代の営業プロセスを最適化するためのフレームワークで、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス(外勤営業)、カスタマーサクセスの4つの段階に分けられます。
ここでは、これら段階(部門)ごとのプロセスと役割を解説します。
- マーケティング
- インサイドセールス
- フィールドセールス
- カスタマーサクセス
マーケティング
マーケティング部門は、リード獲得のためにセミナーやデジタル広告などの手段を用いますが、本来の目的は見込客を次のステージ(インサイドセールス)に進めることです。
これには、ウェブ広告やイベントを通じた認知拡大、展示会やセミナーでのリード獲得、情報提供メールやキャンペーンを通じたリードの育成など、段階別の施策が含まれます。
このプロセスでは、検討初期(認知拡大)、検討中期(リード獲得)、検討後期(リード育成)といった見込み客の各段階の定義や数値を可視化し、マーケティングの真価を発揮することが求められます。
インサイドセールス
インサイドセールス部門は、マーケティングから受け継いだリードの情報を基に、非対面でのコミュニケーション(メールや電話など)を行います。
リードスコアリングを活用してセールス活動の優先順位を定め、マーケティングオートメーションを用いてフォローアップのタイミングを自動化します。
そして、リードの行動履歴をもとに効率的なヒアリングを行い、商談化するタイミングでフィールドセールスに引き継ぎます。
反対に、予算やタイミングの問題などで、商談化するフェーズではないリードに対しては、定期的なフォローを行うことで育成を継続します。
フィールドセールス
フィールドセールス部門の役割は、インサイドセールスから引き継いだリード情報を基に、詳細なニーズを把握し、見込み客に最適な解決策を提案することです。
このフェーズでは、顧客が本当に求めているものが何かを理解し、それに対して最も適した製品やサービスを提案することが重要です。
顧客との対話を通じて信頼関係を築き、長期的なパートナーシップを構築することに注力します。
言わずもがな、フィールドセールスの目標は、顧客の問題を解決し、価値を提供し、成約に至らせることです。
カスタマーサクセス
カスタマーサクセス部門の主な目的は、顧客が製品やサービスを効果的に利用し、ビジネスを成功させるサポートをすることです。
このプロセスには、オンボーディング(新規顧客の導入支援)、活用支援(製品やサービスの効果的な使用方法の提案)、アップセル(追加販売)、クロスセル(関連製品やサービスの販売)が含まれます。
これらにより、顧客満足度の向上、顧客のロイヤルティの強化、その結果として、自社に対する高い顧客満足度を得ることができます。
また、顧客のフィードバックを積極的に収集し、製品やサービスの改善に活かすことも重要です。
カスタマーサクセスは、顧客の成功が組織の成功に直結するという考え方に基づいています。
THE MODELの運用における注意点
THE MODELを導入し運用する際には、いくつかのポイントがあります。
ここでは、企業担当者に特に注意しておいてほしい2点を解説します。
- 部門間を逆流するフィードバック体制を構築し対立を防ぐ
- コンサンプションモデルの増加によるカスタマーサクセスの重要性を理解する
部門間を逆流するフィードバック体制を構築し対立を防ぐ
「分業」ではなく「共業(協業)」するためには、部門間での逆流のフィードバック体制を構築することが有効です。
たとえば、カスタマーサクセス部門からのフィードバックが、フィールドセールス部門の成約率アップに寄与することがあります。
あるいは、フィールドセールス部門の商談実施スピードが遅延している場合には、インサイドセールス部門が調整弁となり、商談設定スピードをコントロールすることもできます。
具体的には、フィールドセールス部門に引き継ぐリストの必要スコアを高めに調整し、より成約確度の高いリストのみに絞り込むなどです。
このように、成約や売上アップという共通の目標意識を持つことで、企業全体としての営業効率を向上させることができます。
THE MODELの特徴は明確な分業制ですが、同時に、共業も図らなければなりません。
コンサンプションモデルの増加によるカスタマーサクセスの重要性を理解する
コンサンプションモデルとは、サブスクリプションモデルの進化系とも言える、顧客が実際に利用した分のみを支払う課金形態で、特にSaaSビジネスでは一般的になりつつあります。
このモデルは、顧客にとって柔軟でコスト効率の高い選択肢となることが多く、一方の企業にとっても顧客との長期的な関係構築を容易にします。
しかし、商談や成約のハードルが下がる一方で、重要になるのはカスタマーサクセスの役割です。
顧客に継続的なサービス利用を促すためには、カスタマーサクセスチームが積極的に顧客の成功を支援する必要があります。アップセルやクロスセルによる客単価の向上も重要な役割となるでしょう。
また、商談や成約のハードルが下がるということは、フィールドセールス部門の役割や業務が、カスタマーサクセス部門に移管されるケースも増えると考えられます。
インサイドセールスの立ち上げや運用にお悩みならLEAGLE(リーグル)のソリューションがおすすめ
インサイドセールスの立ち上げや運用効率にお悩みの企業様には、LEAGLE(リーグル)株式会社のインサイドセールス支援がおすすめです。
LEAGLEのインサイドセールス支援は、ターゲットリストのなかから確度の高いリードのみをエスカレーションし、訪問後の案件化率向上を力強くアシストします。
- コールドコールの段階から受託しホットリードを獲得可能
- ターゲットリストのなかから確度の高いリードにのみアプローチ
- パイプライン管理による中長期的な商談の創出
実際に外資系ハードウェアベンダーに対する支援実績では、リストマネジメントやフォローコール活動などを通して1四半期あたり80件のアポイントを達成し、クライアントのリソース不足やKPI未達といった課題をカバーしました。
またLEAGLEならインサイドセールスだけでなくマーケティング活動・リードジェネレーションの段階からクロージングまで包括的な支援を提供可能なので、貴社の活動状況・課題にあわせて最適なソリューション/プランを提案することができます。
まずは資料請求やオンラインカウンセリングだけでもお気軽にお問い合わせください。
THE MODELについてよくある質問
ここでは、THE MODELに関してよくある質問に回答します。
- THE MODELとはインサイドセールスのことですか?
-
THE MODELは、インサイドセールスを含む、より広範な営業プロセスのフレームワークです。
このフレームワークは、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス(外勤営業)、カスタマーサクセスの4つの段階に分けられており、それぞれの段階が連携して顧客のニーズに対応する体制を構築します。
インサイドセールスはこの中の一部であり、リードの質を高め、フィールドセールスへのスムーズな移行を図る役割を担っています。
- THE MODELに関する本はありますか?
-
はい、THE MODELに関しては、福田康隆氏の著書「THE MODEL ザ・モデル マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス」がおすすめです。
福田康隆氏は、THE MODELを考案し、日本に持ち込んだ第一人者です。
THE MODELがどのようにして効率的な営業プロセスを構築し、各営業部門の役割を最適化するかについての具体的な例が分かりやすく説明されています。
- THE MODELを導入するメリットは何ですか?
-
THE MODELを導入するメリットには、営業プロセスの弱点克服、各部門の専門性やスキルの向上、社内連携の強化などがあります。
各プロセスの明確化とスコア化により、プロセスごとの弱点が明らかになり、それを改善することで全体の収益を増やすことができます。
また、各部門が特定のプロセスに特化することで専門性が高まり、全体の業務効率が向上します。
さらに、THE MODELでは各部署が密接に連携する必要があるため、社内の一体感が増すことでしょう。
この記事のまとめ
「THE MODEL」は、インサイドセールスを含む分業体制の営業手法で、営業プロセスを「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス(外勤営業)」「カスタマーサクセス」の4段階に分けています。
営業フレームワークは、顧客の購買プロセスの大半が営業との接触前に終わっている現代の市場環境に適応するために注目されています。
- マーケティング
顧客との最初の接点を作るためにデジタル広告やイベントなどを用いてリードを獲得し、その後リードを育成します。 - インサイドセールス
マーケティング部門から引き継いだリードの購買意欲をさらに高め、商談に進める役割を担います。
リードの選別やフォローのタイミング設定を自動化し、リサイクルリード(過去に失注してしまったリードなど)を掘り起こすことも重要です。 - フィールドセールス(外勤営業)
見込み客と直接商談を行い、契約を獲得します。
商談のフェーズを管理し、フェーズごとに適切なアプローチを行います。 - カスタマーサクセス
顧客がサービスを最大限に活用できるようサポートし、契約の維持やアップセル、クロスセルを促進します。
また、THE MODELを運用する際の注意点としては、部門ごとの明確な目標やKPIの設定、適切なリード管理、部門間連携の強化が挙げられます。
各部門は分業によって別々の役割を持ちながらも、お互いに連携し共業することで、顧客に対する一連のプロセスを円滑に進める必要があります。
THE MODELの導入と適切な運用により、企業は効率的かつ効果的な営業プロセスを実現し、市場での競争力を高めることができます。