「営業戦略を立てるのに、便利なフレームワークはないだろうか?」「そもそも、どのようにフレームワークを使えば良いのだろうか?」
フレームワークとは、考え方の枠組みのことです。フレームワークに自社の条件を当てはめて考えれば、論理的かつ効率的に営業戦略を決定できます。
ただし、営業戦略の立て方には順序があります。また、やみくもにフレームワークを使えば良いわけではありません。
そこで本記事では営業戦略の立て方に沿って、最適なフレームワークを紹介します。段階に応じたフレームワークの活用で、ぜひ売上を伸ばしてください。
営業戦略の立て方は3ステップ
営業戦略は、以下の流れに沿って立てましょう。
- 市場の把握や状況整理
- 戦略の決定
- 具体的な営業プロセスや戦術を決定
まず自社の置かれた状況を分析し、そこから大局的な営業戦略を練ります。営業戦略とは、自社がどうやってモノやサービスを売っていくのか、という大まかな方針のことです。営業戦略が決まったら、具体的にどう実行するのか考えましょう。
実行プロセスや手段は、戦略ではなく「営業戦術」です。戦術まで決定できれば、スムーズに実行へと移せます。
営業戦略の決定にはフレームワークの活用が便利
営業戦略の決定には、フレームワークの活用が便利です。フレームワークとは、論理的に思考するための枠組みです。市場分析や市場開拓などといった目的に応じて、さまざまなフレームワークがあります。フレームワークを使えば検討すべき項目が整理され、効率よく営業戦略を検討できますよ。
営業戦略の成功事例や策定のポイントについて詳しく知りたい場合は、「営業戦略の成功事例10選|戦略の重要性と成功に導く3つのポイント」をご覧ください。
STEP1.自社の状況整理に役立つフレームワーク
営業戦略を練るうえで、自社を取り巻く環境の分析は欠かせません。このステップで役立つフレームワークは、以下のとおりです。
フレームワーク | 目的 |
---|---|
ファイブフォース分析 | 脅威やリスクを分析 |
VRIO分析 | 自社の強みや弱みを分析 |
4C分析 | 顧客目線で自社を評価 |
PEST分析 | 中長期的な営業戦略を立てる |
目的に応じて活用しましょう。
脅威やリスクを分析する-ファイブフォース分析
ファイブフォース分析では、自社の脅威やリスクとなり得る要因を整理できます。検討するのは以下5つの要素です。
検討要素 | 検討のポイント |
---|---|
代替品の脅威 | 代替品で自社の顧客ニーズを満たせるリスクはあるか |
新規参入者の脅威 | 新規参入のしやすさ、シェアを奪われるリスクはどのくらいあるか |
買い手(顧客)の交渉力 | 顧客の要求や値引き交渉により、利益が少なくなるリスクはどのくらいあるか |
売り手(仕入れ先)の交渉力 | 仕入れ値が上がり、利益が少なくなるリスクはどのくらいあるか |
自社と競合する存在(競合他社) | 競合他社の影響力や脅威はどのくらいあるか |
営業戦略を練るうえで脅威となるのは、決して競合他社だけではありません。ファイブフォース分析では、自社にとってどの要素が最も大きな脅威になるのか、またこうした脅威の影響を受けにくくするにはどうすべきか検討できます。
自社の強みや弱みを分析-VRIO分析
経営資源の観点から、自社の優位性を分析できるのがVRIO分析です。経営資源とは、会社の持つ以下の要素を指します。
- 人材の質(ヒト)
- 商品・サービス(モノ)
- 投資できる資金(カネ)
- 仕入れ先・販路(情報)
- リードタイムの短さ・キャッシュフロー(時間)
- 独自のノウハウや技術(知的財産)
これら6つの要素を軸に、以下の要素を検討しましょう。
検討要素 | 検討のポイント |
---|---|
Value(経済的価値) | 社会に対してどのような価値を提供しているか |
Rarity(希少性) | 自社の経営資源にどれほど希少性があるか |
Imitability(模倣困難性) | 他社が自社の経営体制を模倣できるか |
Organization(組織) | 経営資源を活用できるだけの組織力があるか |
VRIO分析を行えば、伸ばすべき強みや改善すべき弱みが見えてきます。
顧客目線で自社を評価する-4C分析
4C分析は、顧客目線で自社を評価できます。検討すべき要素は、以下のとおりです。
検討要素 | 検討のポイント |
---|---|
Customer Value (顧客価値) | 自社の商品やサービスを利用することで、顧客はどのようなメリットを得られるか |
Cost (顧客コスト) | 顧客の思う価値に対し、価格設定は適切か |
Convenience (利便性) | 顧客にとって、成約までのプロセスや成約後の利便性は問題ないか (例)リードタイムは長すぎないか、決済方法や問い合わせの方法が不便ではないかなど |
Communication (コミュニケーション) | 顧客とのコミュニケーションは十分に取れているか |
業界シェアを伸ばすには、ユーザーファーストの考え方が必須です。顧客目線に立ち、改善すべきポイントはないか検討しましょう。
中長期的な営業戦略に-PEST分析
中長期的なマクロ環境をシミュレーションし、営業戦略に役立てるのがPEST分析です。政治・経済・社会・技術といった4つの要因を検討し、自社の中長期的な課題を見つけます。PEST分析の例は、以下のとおりです。
STEP2.大局的な営業戦略を決めるフレームワーク
どのように自社の商品やサービスを売っていくのか、大まかな営業戦略を練るうえで便利なフレームワークは以下のとおりです。
フレームワーク | 目的 |
---|---|
STP分析 | 市場開拓 |
3C分析 | 営業戦略の策定 |
SWOT分析 | 経営環境から営業戦略を決定 |
これらのフレームワークを使えば、自社を取り巻く環境に対してどういったアプローチが適切か、検討できます。目的に応じて活用しましょう。
市場開拓に有効-STP分析
STP分析は市場開拓やペルソナの設定など、新規事業や営業戦略の見直しに便利です。
検討要素 | 検討のポイント |
---|---|
Segmentation(市場細分化) | ニーズごとに市場(ユーザー)を細分化 |
Targeting(ターゲットの選定) | ターゲットを絞り、自社のペルソナを設計 |
Positioning(立ち位置の明確化) | 市場の中で自社がどこにいるのか立ち位置を把握する |
「市場細分化」のステップは以下のとおり、さまざまな要素でユーザーを分類します。
- 年齢・性別・年収などの属性
- 国・都道府県・文化などの地域性
- 価値観やライフスタイルなどの心理性
- 利用経験や買い物の頻度などといった行動性
「ターゲットの選定」ステップでは、細分化した市場の中で自社がターゲットとするユーザーを絞り込みます。このときマーケティングの手法は一点特化型なのか、ユーザーごとに差別化するのかも検討します。
「立ち位置の明確化」のステップでは、機能や価格などを座標としたポジショニングマップを活用すると分かりやすいでしょう。
大まかな営業戦略の策定に最適-3C分析
自社を取り巻く環境の分析と、有効な営業戦略の策定を同時に行えるのが3C分析です。3C分析の構造は非常にシンプル。以下のとおり、「自社」「市場」「競合」という3つの要素について検討します。
経営環境を俯瞰しつつ、自社の評価もできるフレームワークの代表格です。
自社の経営環境を評価する-SWOT分析
SWOT分析は自社の「強み」と「弱み」の観点から、営業戦略を立てられるフレームワークです。自社の内部環境と自社を取り巻く外部環境、それぞれのプラス要因とマイナス要因を検討します。
プラス要因 | マイナス要因 | |
---|---|---|
内部環境 | 強み(Strength)自社の持つ強みや長所、得意なことなど | 弱み(Weakness)自社の持つ弱みや短所、苦手なことなど |
外部環境 | 機会(Opportunity)社会や市場の変化などでプラスに働くこと | 脅威(Threat)社会や市場の変化などでマイナスに働くこと |
外部環境については、PEST分析で整理された強みや課題を落とし込んで考えるとスムーズです。
STEP3.具体的な営業戦略・戦術を検討できるフレームワーク
より詳細な営業戦略や、具体的な戦術の検討に便利なフレームワークは、以下のとおりです。
フレームワーク | 目的 |
---|---|
4P分析 | 商材ベースで営業戦略を決定 |
バリューチェーン分析 | 営業プロセスの見直し |
クロスSWOT分析 | 自社の弱みを強みに変える |
営業戦略の策定には、商品そのものの価値やコスト、販促方法などさまざまな視点で検討を進める必要があります。上記のうち、複数のフレームワークを組み合わせて活用するのもおすすめです。
商材ベースで営業戦略を決定-4P分析
4P分析は、「なにを」「いくらで」「どのように」「どうやって」売るか具体的に検討できるフレームワークです。これまで行った市場や競合分析の結果を元に、自社の強みを活かせる売り方を検討しましょう。
検討要素 | 検討のポイント |
---|---|
Product(商品・サービス) | 顧客は何を求めているのか |
Price(価格) | 市場やターゲットに対する適正価格はいくらか |
Place(流通) | どのような経路で販売するか |
Promotion(販促) | ターゲットに最適なプロモーション方法は何か |
検討はあくまで、ターゲットベースで考えましょう。販促の方法はさまざまですが、たとえばターゲットが高齢な場合はテレビやポスティングといった方法が有効です。
反対に、ターゲットが若年層で限定的な場合は、ダイレクトメールやリスティング広告といった手法が検討できます。
営業プロセスを見直せる-バリューチェーン分析
バリューチェーン分析は、顧客にモノやサービスを提供するまでのプロセスを見直せるフレームワークです。バリューチェーン分析では企業全体の活動を、以下のように分類します。
主活動 | ||||
購買物流 | 製造 | 出荷物流 | マーケティング・販売 | サービス |
支援活動 | ||||
営業プロセス全般の管理人事・労務管理技術開発調達 |
まずは自社の業務を、上記の活動に当てはめて分類していきましょう。たとえば自社商品の広告を出してプロモーションすることは、主活動の「マーケティング・販売」に該当します。業務の分類だけでも、営業プロセスが可視化され戦略立案に役立ちます。
業務の分類ができたら、以下の流れで検討していきましょう。
- 各業務の担当部署と年間コストを洗いだす
- 各業務の強みと弱みを洗いだす
- 各業務の強みに対してVRIO分析を行い、点数化する
上記のステップを踏むことで、多角的な視点で営業戦略を策定できます。
弱みを強みに変える-クロスSWOT分析
クロスSWOT分析はSWOT分析で洗いだした4つの要素を軸に置き、掛け合わせて戦略を練るフレームワークです。
自社の持つ強みや長所、得意なことなど 強み(Strength) | 自社の持つ弱みや短所、苦手なことなど 弱み(Weakness) | |
機会(Opportunity) 社会や市場の変化などでプラスに働くこと | 機会×強み積極的に取っていくべき戦略 | 機会×弱み弱みを克服することでチャンスがある戦略 |
脅威(Threat) 社会や市場の変化などでマイナスに働くこと | 脅威×強み強みを活かして脅威のリスクを抑える戦略 | 脅威×弱みリスクを最小限に抑える戦略 |
IT企業を例に考えてみましょう。たとえば「新規参入企業で業界内のコネクションや実績は少ない」といった弱みがあるとします。一方、機会の観点から考えるとIT化は社会的にも進んでおり、事業拡大のチャンスはあるでしょう。
これら「機会」と「強み」を掛け合わせると「コネクションや実績の少なさをカバーするため、ブランド力を強化し機会を得る」といった戦略が生まれます。
営業戦略を考えるときは「ロジックツリー」も便利
課題や目標が明確に決まっている場合は、ロジックツリーも便利です。ロジックツリーとは、1つのテーマに対して論理的に対策を掘り下げていく思考法です。
上記のとおり、課題に対して「どうすれば良いか」をどんどん掘り下げていきます。図の右側にいくほど対策の具体性は高まり、実行可能な営業戦略として採用できるようになっていきます。
クロージング段階の営業戦略に使えるフレームワーク
フレームワークは、営業戦略を決めるとき以外にも活用できます。見込み客の整理や分析、商談などクロージング段階では、以下のフレームワークが便利です。
フレームワーク | 目的 |
---|---|
BANT条件 | 見込み客の特定 |
MEDDIC | 顧客に対する効果的なヒアリング |
FABE分析 | 顧客に対する効果的なプレゼン |
DMUマップ | 意思決定プロセスを整理 |
なお、顧客の分析といった業務を効率化するには、インサイドセールスツールも便利です。営業支援ツールについては、「インサイドセールスツール比較」をご覧ください。
見込み客の特定-BANT条件
見込み客の特定や優先順位付けに便利なのが、BANT条件です。ポイントとなる要素は、以下のとおり。
検討要素 | ポイント |
---|---|
Budget(予算) | 予算はいくらくらいか |
Authorityt(決裁権) | 決裁者は誰か |
Needst(需要) | 自社の商品やサービスが需要を満たせるか |
Time framet(導入時期) | 導入時期はいつくらいか |
上記の要素を聞き取り比較検討することで、見込み客を特定できます。
詳しいヒアリングに便利-MEDDIC
BANT条件よりさらに詳しく見込み客を分析するには、MEDDICを活用しましょう。ポイントとなる要素は、以下のとおりです。
ヒアリング要素 | 内容 |
---|---|
Metricst (測定指標) | 顧客が自社に期待すること(例)売上10%アップなど |
Economic Buyert (決裁権限者) | 成約の最終決裁者は誰なのか |
Decision Criteriat (意思決定基準) | 何を基準に成約の可否を判断するのか(例)費用・使いやすさ・保証など |
Decision Processt (意思決定プロセス) | 成約までにどのようなプロセスがあるか(例)稟議ルート・導入までの時間など |
Identify Paint (課題) | 自社商品が解決できる、顧客の課題 |
Championt (擁護者) | 自社に関心があり、最終決裁者に対して影響を持つ人物は誰か |
MEDDIC情報を把握しておけば、より顧客のニーズに沿った良い提案も可能になります。
プレゼンに役立つ-FABE分析
社内プレゼンや商談で役立つのが、FABE分析です。FABE分析を行いポイントに沿って話を進めれば、自社の商品やサービスを完結に訴求できます。
提案要素 | 内容 |
---|---|
Featuret(特徴) | 商品やサービスそのものの特徴 |
Advantaget(優位性) | 競合に対する優位性 |
Benefitt(顧客便益) | 商品やサービスを利用することで顧客が得られるメリット |
Evidencet(証拠) | これまで紹介した「特徴」「優位性」「顧客便益」の根拠となるデータ |
意思決定プロセスを整理-DMUマップ
クロージングから最終的な成約を獲得するには、顧客の意思決定プロセスを理解する必要があります。その際便利なのが、DMU(Decision Making Unit)マップです。DMUマップとは、顧客の意思決定に関与する人物を相関図にまとめたもののこと。
商談を行う窓口担当者を中心として、成約までに関与する人物を書き出し、関係性を書き込みます。たとえばDMUマップには、以下のような人が登場します。
- 課題解決が可能なサービス導入を発案した営業企画部マネージャー
- サービスの使用感を確かめる営業部スタッフ
- 予算の検討を行う経理部スタッフ
- 契約内容の検討を行う法務部スタッフ
- 最終的に成約の可否を決める営業部部長 など
顧客の意志決定に関与する人を理解することで、「稟議が降りなかった」「なぜか成約までいかなかった」といった事態を防げます。
営業戦略にフレームワークを使う注意点
営業戦略にフレームワークを使う際は、以下の点に注意しましょう。
- 目的に応じてフレームワークを使い分ける
- 複数のフレームワークを活用する
- フレームワークに固執しすぎない
- 営業戦略以外の取り組みも重要
- 常にPDCAサイクルを回す
フレームワークは便利ですが、万能ではありません。目的に応じて使い分ける必要があるうえ、フレームワークを使ったからといって突然素晴らしい営業戦略が生まれるわけでもないのです。地道な営業戦略の検討を少々効率よく進められるもの、と認識しておきましょう。
目的に応じてフレームワークを使い分ける
フレームワークは、目的に応じて使い分けましょう。たとえば細かな戦略を練る段階で、大局的な市場分析に使えるフレームワークを用いても、良い案は生まれないでしょう。
複数のフレームワークを活用する
1つのフレームワークだけに頼りすぎないのもポイントです。営業戦略を練るには、いくつかのステップがあります。そのステップや目的に応じて、適切なフレームワークを使っていきましょう。
フレームワークに固執しすぎない
フレームワークは、営業戦略の策定に便利な枠組みです。しかしあくまで思考を型にはめて効率化するためのものであり、無理に活用する必要はありません。どのフレームワークを使おうか悩んだり、営業戦略を考えたりするのに時間を要するのでは本末転倒です。
ときに、型にはまらない柔軟な考え方が良い営業戦略をもたらす場合もあります。
営業戦略以外の取り組みも重要
良い営業戦略を策定すること以外にも、売上を伸ばす方法はあります。たとえば営業担当者のスキル底上げや、営業プロセスそのものの効率化など。
営業戦略は売上を伸ばすうえで重要です。しかしそれだけにとらわれず、広い視野でより良い施策を検討しましょう。
常にPDCAサイクルを回す
フレームワークを使ったからといって、必ず成果が出るわけではありません。もし良い結果が出なかった場合は、その原因を特定して次に生かしましょう。スピーディーにPDCAサイクルを回して改善していくことで、より確度の高い営業戦略が練れるはずです。
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まとめ | リーグルが営業戦略の策定をサポート
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